7. プロマネ育成カリキュラム(8週間プログラム)
新任〜中堅プロジェクトマネージャーを対象に、PMBOK第8版の考え方を 「知っている」から「使える」に移す8週間の研修プログラム案。 週1回・90分のワークショップ形式を想定。
7.0 全体設計方針
- 講義(インプット)は最小限にし、自分のプロジェクトを教材にした演習を中心に置く
- 各回の最後に「次回までに実務で1つ試すこと」を必ず1つ決める(宿題ではなく実践課題)
- メンター(先輩PM)が各回にコメンテーターとして参加し、演習後のディスカッションを担当
図:8週間ロードマップ(知っている→使える)
W1 全体像 ─▶ W2 原則1-3 ─▶ W3 原則4-6 ─▶ W4 領域で診断
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W8 総合ケース+批判 ◀─ W7 AI/アジャイル ◀─ W6 成功の二軸 ◀─ W5 プロセス+テンプレ
└── 各回の最後に「次回まで実務で1つ試す」=実践課題を必ず1つ決める
インプット(講義)は最小。自分のプロジェクトを教材にした演習が中心。7.1 週次プラン
| Week | テーマ | 教材 | 主要演習 | 実践課題(次回まで) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | PMBOKの全体像・なぜ第8版か | 01、07 | 自分の組織のプロジェクトが「予測型/適応型/ハイブリッド」のどれに近いか議論。09で本研修の対象範囲(PMP対策ではない等)を共有 | 直近プロジェクトの進め方を1枚で図示する |
| 2 | 6つの原理原則①(1〜3) | 02 | 原則1〜3のセルフチェックを自分のプロジェクトで実施 | ✕がついた項目1つに対する改善アクションを1つ実行 |
| 3 | 6つの原理原則②(4〜6) | 02 | 原則4〜6のセルフチェック+チームの心理的安全性の簡易サーベイ | チームに1つ、悪いニュースを歓迎する具体的な合図を導入 |
| 4 | パフォーマンス領域で現状を診断する | 03 | 3.4の領域別ヘルスチェックを実施しグループ発表 | 最も弱い領域について、原因を1原則に紐づけて報告 |
| 5 | プロセスの基礎とテーラリング+実践テンプレート | 04、10 | 自分のプロジェクトで「省略しているプロセス」「過剰にやっているプロセス」を洗い出す。RACI・リスク登録簿(10)を自分のプロジェクトで試作 | テーラリング方針を1文でチームに共有 |
| 6 | 成功の評価軸:成果とプロセス | 05 | 直近プロジェクトを2軸マトリクスでプロット、象限別の議論 | 次回レビューで成果・プロセスを別枠で報告する形式に変更 |
| 7 | AIとプロジェクトマネジメント/アジャイルとの橋渡し | 06、08 | AI活用マップ(6.5)を作成し、委ねる範囲/人間判断範囲を線引き。8.4のアプローチ診断で自分のプロジェクトの予測型/適応型領域を仕分け | AI活用ガイドラインの草案を1ページ作成 |
| 8 | 総合ケーススタディ+批判的視点+修了評価 | 全ファイル、特に09 | 7.2のケーススタディをグループで分析・発表。9.4「疑うべき点」演習で締めくくる | 自分のプロジェクトに対する90日改善計画を作成 |
7.2 総合ケーススタディ(Week8用)
ケース:「予定通り終わったが誰も使わなかった社内ツール」
半年かけて開発した社内申請システムが、予算内・スケジュール内で完成した。 QAも通過し、重大な不具合もなかった。しかしリリース3ヶ月後の利用率は5%未満。 現場は「そもそも今のExcel運用で十分」と回答している。
議論の観点(ファシリテーター用ガイド)
- 05_success_criteria.md の2軸マトリクスでは、 このプロジェクトはどの象限に位置するか(想定回答:③手堅い失敗)
- どの原則の実践不足がこの結果につながったと考えられるか (想定回答:原則2「価値に注力する」の検査・適応が不足。要件定義時の仮説を 途中で誰も再検証していない)
- どのパフォーマンス領域のモニタリングがあれば、途中で軌道修正できたか (想定回答:ステークホルダー領域=エンドユーザーの継続的な関与不足)
- このプロジェクトのふりかえりを、原則6「権限付与された文化」の観点から見ると 何が言えるか(想定回答:現場から「使わないと思う」という声が早期に 出ていた可能性があるが、報告経路がなかった/聞かれなかった)
7.3 評価ルーブリック(修了時の到達確認)
| 評価軸 | Level 1(要育成) | Level 2(一人前) | Level 3(他者を指導できる) |
|---|---|---|---|
| 原理原則の理解 | 6原則を説明できない | 6原則を自分の言葉で説明できる | 具体的なプロジェクト事例に紐づけて説明できる |
| パフォーマンス領域の運用 | 領域という概念を知らない | 定期レビューで領域別に振り返れる | 弱い領域を早期に検知し先手で対応できる |
| プロセス・テーラリング | プロセスを一律に適用しようとする | プロジェクト特性に応じて省略・追加を判断できる | チーム全体にテーラリング方針を説明し合意形成できる |
| 成功評価の二軸 | QCDのみで成功を判断する | 成果とプロセスを分けて評価できる | 二軸評価を組織のレビュー標準に落とし込める |
| AIとの向き合い方 | AI活用の判断基準がない | 委ねる範囲と人間判断範囲を線引きできる | チームのAI活用ガイドラインを主導して作成できる |
| 批判的思考(フレームワークを疑う力) | PMBOKの手続きを無条件に踏襲する | 過剰な手続きに気づき、テーラリングで軽量化できる(09) | フレームワークの限界を踏まえた上で、組織に合わせた運用ルールを設計できる |
各軸でLevel2以上を修了基準とする。Level1が残る軸は、個別メンタリングで 該当する資料ファイルの演習を再実施する。
7.4 ファシリテーターへのメモ
- Week2・3の「セルフチェック演習」は、正直に✕をつけられる空気づくりが最重要。 最初にファシリテーター自身の過去プロジェクトの✕を開示すると効果が高い
- Week6の2軸マトリクスは、「プロセス成功だが成果失敗」の事例が出やすい組織ほど 議論が深まる。無理に「成功事例」ばかり集めない
- Week7のAIテーマは技術の話に寄りすぎないよう注意する。論点は常に 「PMとしての説明責任がどこにあるか」に戻す(06.2)
- Week8の12:批判的視点は、研修全体を「型の暗記」で 終わらせないための最重要パート。ファシリテーターは「PMBOK通りにやったのに 失敗した経験」を先に自己開示し、フレームワークへの健全な懐疑心を示すこと