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9. PMBOKへの批判的視点:鵜呑みにしないための章

本資料集はここまでPMBOK第8版を「使える知識」として解説してきたが、 PMBOKは万能ではない。育成対象のプロジェクトマネージャーには、 フレームワークを鵜呑みにするのではなく、いつ・なぜ疑うべきかまで 教えるのが本来の育成である(本ファイルはこの資料集自体に向けられた 敵対的レビューの精神を、受講者にも身につけさせるための章)。

9.1 よくある批判とその妥当性

批判内容どこまで妥当か
形式主義に陥りやすいプロセス・テンプレートを揃えること自体が目的化し、実質的な価値提供が疎かになる妥当05:成果の成功/プロセスの成功の「③手堅い失敗」はまさにこの症状
アジャイル実務との相性従来版(特に第6版以前)は予測型を前提にしており、変化の速い開発と噛み合わない一部妥当だが第7版以降は緩和11:アジャイル/ハイブリッドとの橋渡し参照
欧米の大規模組織中心の発想契約・調達・変更管理委員会など、階層型の大組織を前提にした概念が多い妥当な面あり。中小規模・スタートアップでは過剰な手続きになりがち。テーラリングで軽量化する前提が必要
資格ビジネスとの結びつきPMI自体がPMP資格や書籍販売で収益を得ており、「体系化のための体系化」に陥るインセンティブがあるのでは、という指摘一定の留意は必要。だからといって内容の実務価値が否定されるわけではないが、権威をそのまま鵜呑みにしない態度は有効
「原則」は反証不可能なほど抽象的「価値に注力する」等の原則は、誰にも反対できない一般論で、具体的な行動指針にならないという批判部分的に妥当。だからこそ本資料集は各原則に「現場での使い方」「アンチパターン」を併記している(02

9.2 「PMBOKを疑うべき」具体的な状況

以下のいずれかに該当する場合、PMBOKの標準的な進め方をそのまま適用せず、 なぜその手続きが必要かを関係者に説明できるかを自問すること。

  • [ ] チームが5人以下の小規模プロジェクトで、変更管理委員会(CCB)のような 公式機関を設置しようとしている → 過剰な手続きの疑いあり
  • [ ] リスク登録簿やコミュニケーション計画を作ること自体が目的化し、 誰も実際に参照・更新していない → 05の 「プロセスの成功」を追い求めて「成果の成功」を犠牲にしていないか確認
  • [ ] 原則を唱えるだけで、具体的な行動が何一つ変わっていない (例:「価値に注力しよう」と言うだけで、価値仮説の再検証タイミングを 1つも設定していない) → 02の各原則のセルフチェックで 具体行動に落とし込めているか確認
  • [ ] PMBOKに書いてあるという理由だけで、現場の反対意見を押し切ろうとしている → 原則6:権限付与された文化に反する。 フレームワークは対話を止める根拠ではなく、対話を助ける道具であるべき

9.3 本資料集自体への批判的な問い(自己言及)

この資料集自体にも、以下のような弱点がある。受講者にも共有し、 「教材ですら完璧ではない」という前提で学ぶ姿勢を作る。

  1. 第8版の一部内容(パフォーマンス領域・40プロセスの詳細)は未確認情報の まま構成されている(task-lists.md TASK-18)
  2. 演習・チェックリストは自己申告制であり、客観的な実力測定にはなっていないtask-lists.md TASK-15、バックログ)
  3. 日本企業特有の意思決定慣行(稟議・多重下請け構造等)への適用が まだ検討されていない(task-lists.md TASK-14、バックログ)
  4. 対応表・マッピング(第7版12原則↔第8版6原則、Scrum対応表等)の多くは 学習用の仮説であり、公式の一次情報ではない

このセクション自体を定期的に見直し、鵜呑みにされていないかを チェックすることを推奨する(07:適用範囲・保守運用参照)。

9.4 演習:あなたの組織でPMBOKを適用する際の「疑うべき点」を3つ挙げる

#疑うべき点理由どうテーラリングするか
1
2
3

この演習は07:育成カリキュラムのWeek8(総合ケーススタディ)の 議論の締めくくりとして使うと、「型を学ぶ」で終わらせず「型を疑い、使いこなす」段階まで 到達させやすい。